中学生くらいの子が重しの石を着物の帯で自分の体に巻き付け川の中に入っていくシークエンスに続き、残酷な言葉をもっとも残酷に響くように考え抜かれた声色でまるで当たり前のことのように話す祖母(演ずるのは吉行和子さん)のシークエンスが、映画の技法としての「フラッシュバック」として挿入され、それは、この幼い主人公に起こっている症状としての「フラッシュバック」でもあるだろうことや、こういうことが何年にも渡って毎日のように繰り返されてきたであろうことが一瞬で理解される。しかし流れる川の水音、大合唱している蝉の声、緑の木々、照り付ける太陽の中で主人公は生きることを決意し、次のシークエンスでは時間は飛んで成人となっており(演ずるのは菜葉菜さん)、現在からみれば極めて理不尽であり、大日本帝国憲法下の当時としても無理筋の起訴理由で裁判にかけられ、予審判事からの職業を問う形式的な質問に対して、「全てのものをぶっ壊すのが私の職業です」と答える。その一見突飛な言葉は、当人にとってはそうとしか言いようのないのだろうという説得力をもった言葉として発せられ、この映画を見ている私(たち)に力を与える。よい映画だった。この映画で浜野佐知さんという映画監督を初めて知った私は、過去の作品も見たいと思い、シネマテーク高崎で開催されていた浜野佐知映画祭にも駆けつけることになるのだった。
